from 和ジオ

突然思い出したこと4 -パソコン通信と 凹っち -

思いつきや懐かしい話など

突然思い出したこと4 -パソコン通信と 凹っち -

時は戻り、1990年台後半、パソコン通信時代。

殺伐としたインターネットコミュニティーに疲れたあたなに、 アットホームな草の根ネットのなつかし話を。

凹っち

学校の同級生に、「凹っち」という男がいた。 なぜ「凹っち」か。 彼の「パソコン通信」のハンドル名だ。 リアルの世界でも、「くぼっち」と呼ばれていた。

パソコン通信というのは、すべてを管理するホストに対して直接電話をかけて接続する。 当然、電話をかければ電話代がかかる。 自分のうちから遠くのホストに電話をかければ長距離料金に なってしまう。 また、全国規模の大手のパソコン通信は接続することに 対してお金がかかった。

それ故に、各地域に密着した「草の根ネット」と呼ばれる 個人が運営している無料のホストが当時はたくさんあった。 ユーザは自分の家から3分10円でつながる、好みにあったホストを 探して、そこに住み着く。草の根ネットのホスト同士は基本的に接続 しあうことはないので、そこだけの閉じられた世界となる。

そんなわけで、同じホストに接続している人はだいたい近くに住んでいることが 多く、インターネットとはまた違ったアットホームな コミュニティーが形成されるわけである。 ユーザ数も、多くてアクティブが 20とか30名とかそれくらいのものである。

余談だが、電話をかけてホストに接続するということは、 そのホスト主(シスオペという)の家には、複数人の同時接続を実現するために、 電話回線がたくさんあったわけで、運営管理も含めて シスオペさんはなかなかの重労働であったことは想像に難くない。 すべて好意の上で成り立っていたシステムだ。

くぼっちこと凹っちは、その、とある草の根ネットの常連だった。 おれも、そこのホストが好きでよく接続していた。

まー、なんだかんだ同じ学校の連中も沢山このホストにいたわけで、リアルと パソコン通信のなかがごっちゃになって、学校にいないと分からないネタ をふり、よく学校以外のユーザの人に怒られたもんだ。 いーとこでもあり、わるいところでもあり。

リアルで知っているもんだから、冗談が冗談ですむいいところもある。 そんな一つが、「へこっち」。「凹っち」とかいて「くぼっち」と読む わけだけど、なんかバカにしたいときは「へこっち」。「やーい、へこっち」 とか。 小学生並みである・・・。

「へこっち」については、語呂がよかったからか、ホスト上のリアルで あんまり知らない人にも受け入れられ、他の人もよく使っていた。 「へこっちさん、どうですか?(笑」とか。

雰囲気も良く、みんな仲良くやっていたわけである。

パソコン通信

どっかでもかいたけど、PCは DOS 全盛期。 パソコン通信も、DOSのターミナルアプリケーションで接続する。

実際に接続しようとすると、まずはモデムがピポパ音をたてて ホストに電話する。 で、例のピーガー音がするわけだ。 この辺は、インターネットのダイアルアップ接続と同じだ。 接続プロトコルが違うだけ。 個人ホストならば、回線がいっぱいで話中のことも多々ある。

で、接続されるとこんな感じに表示がでる。 モデムが 14.4Kbps とか 28.8Kbps だと、文字の転送も目に見えて出力 されるので、上から、だらだらだらーっていう感じで表示される。

*** [CH02]チャンネルに接続しました ***
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ほげネットにようこそ!!
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でてくる質問にキーボードで答えて操作を進めていくわけだ。 やりたいことは、一番下に表示されているように文字コマンドを 投入して実行する。たとえば、メールが読みたければ、「M [ENTER]」だ。

なんかホストにつなぐと、ハッカーみたいな感じしない?しないか・・・。 あと cisco のルータのコンソールポートにつないだときも思う。同志はいませんか?・・・。 こう、なんか転送速度が目に見える感じが、なんか、、こう、、いいよね。:-)

あと、フル画面でこれが表示されるのも迫力がある。 他のものが目に入らないのって、結構イイよ。気が散らない。没頭できる。 Windows でてから、Windowsのターミナルでパソコン通信に つないでみたけど、なんかはいりこめなかった。 とかいいつつ、今は 1600x1200 とかの解像度でマルチウインドウ バンバン使ってるんだけどさ。

嵐を起こした新人さん

凹っちは、たくさん書き込みをする。 パソコン通信でたくさん 書き込みをする人は、盛り上げてくれてありがとう的なものが あるので、月初めには、書き込み数ランキングとかがでる。 凹っちはいつも、1位、2位だった。

やはりネタふりもうまいので、レスもたくさんつくホスト上で優秀な 人材だった。

そんなある日、新人さんの自己紹介書き込みがあった。 内容はわすれちゃったけど、「よろしくお願いします!」的な。 きちんとした日本語で、礼儀正しい人だった。どうも パソコン通信初心者のようだ。初々しい。 仮に「ナイツのツノ」さんとする。

もちろんそんないい人に、レスをつけないわけがないのが凹っちさんである。 「初めまして、凹っちです」とレスをつける。

パソコン通信のレスのやりとりって、結構たわいのない部分も あって、たとえば

ナイツのツノ 「凹っちさんは、なんてお呼びするのですか?」的なレスにさらに、

凹っち 「ログをみれ見れば分かりますよ」などと レスをつけ割と単文でちょこちょこやったりする。

そして、この軽い気持ちで凹っちが書いた「ログをみれ見れば分かりますよ」 のレスで、ナイツのツノさんが嵐を起こす。

Message  #0311 is from: DX0131 ナイツのツノ
Time: XX/06/02 01:46:29 Section 99: フリーボード
Subj: Re:はじめまして

ログを見てみて凹っちさんの読み方が分かりました。


へこっち さん


でよろしいのですね?


                                    月夜が太陽に隠れる時まで
                                                ナイツのツノ

くぼっちなのに、

へこっち

ログ見たのに、

へこっち

素で、

へこっち

その瞬間、おれの中で何かが壊れた。 脳がへこっちに支配される。

へこっちへこっちへこっちへこっちへこっちへこっち へこっちへこっちへこっちへこっちへこっちへこっち へこっちへこっちへこっちへこっちへこっちへこっち へこっちへこっちへこっちへこっちへこっちへこっち へこっちへこっちへこっちへこっちへこっちへこっち へこっちへこっちへこっちへこっちへこっちへこっち へこっちへこっちへこっちへこっちへこっちへこっち へこっちへこっちへこっちへこっちへこっちへこっち

たとえば、へこっちが会社にいたとすると、後輩からは

へこっちさん

先輩からは、

おい!へこ

・・・へこ。 みればみるほど、へこへこな名前。 ぶひょぶひょぶひょぶひょぶひょぶひょぶひょぶひょ。

ホスト上が一体となった。怒濤の書き込みがある。

Subj: Re:はじめまして

> へこっち さん
> でよろしいのですね?

飲んでいた牛乳を、モニタに吹きかけました。

おそらくつくりではないだろう・・・。

Subj: Re:はじめまして

おやめください・・・。おやめください・・・。

確かに窒息させられてはかなわん・・・。

以下、同通10通という感じだった。 笑える。

パソコンしてて、ニヤニヤしたことはあったが 瞬間で吹き出したのはこれが初めてだ。

いいか悪いかはおいておいて、 インターネットになってから掲示板やメーリングリストで 自己紹介で話が続くことってなくなったよね。 あんまり、興味ないというか。 どちらかというと、パソコン通信は、情報交換よりも コミュニティーの手段の色合いの方が強かったのかもしれない。

流れる文字を見て

うまく伝えられたかどうか不安だけども、このように パソコン通信には、独特の間であるとか、情報量であるとか、 接続環境などとかで形成される、 インターネット(Webサイト)にはない表現があった。

実は、インターネットを使って パソコン通信ホスト接続を telnetクライアントでシミュレートするようなソフトもいくつかあり、 この表現が好きな人もまだまだいるんだな、と感じる。

遠い目をしながら、現在の通信技術でくるまれたクラシックな表現を 楽しむのもたまには良いかもしれない。

せっかくだから、インターネットも28.8K のダイアルアップで 接続するといい。 ゆっくり流れる文字を見れば、ハッカー気分が味わえるハズ・・・。

やっぱり、おれだけか・・・?。